明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
会派共用費の政務活動に係る条例への規定の是非
政務活動費は地方自治法100条14項に基づき条例でその経費の範囲、すなわち使途を規定する必要がある。
政務活動費の交付対象は議員又は会派であるが、議員個人に政務活動費が交付される場合、会派としての政務活動に対する交付はなされないことから、会派が支出する経費として当該議員個人への政務活動費を支出することができるか疑義が生じる。
【地方自治法100条】
⑭ 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。
全国都道府県議会議長会及び全国市議会議長会における政務活動費の交付に関する条例案(例)における使途基準において、会派共用費は規定されていない。
これは、会派が事業として行う政務活動に対しては、交付対象を会派及び議員とすれば支出が可能であることから、あえて議員個人のみへの政務活動費の交付の際に使途として考える必要はないからであると解される。
しかし、名古屋高判令和6年6月19日におけるとおり、一般に会派所属の議員の行う政務活動には議員個人の活動として行うものと、会派の事業として行うものの双方が含まれ、会派の事業として行うものに関する費用は直接的には会派が支出する費用であっても、議員の政務活動と合理的関連性を有するといえるから、会派共用費は地方自治法の趣旨に沿うものであるとされた。また、地方自治法100条14項は、政務活動費を会派又は議員のいずれに交付するかを条例の定めに委ねていることから、会派共用費に関し、政務活動費を会派に交付することとするか、会派所属の各議員に交付することとするかも条例の定めに委ねられているというべきであり、会派共用費が会派において支出する経費であるとしても、当該経費につき政務活動費を議員に対して交付することが条例の規定と矛盾するものではないし、使途基準の経費として条例に規定することも許容されるものと判断している。
ゆえに、政務活動費の交付対象を議員個人のみと規定する中で、会派共用費の使途基準として条例に規定し、支出することは問題ないものと解される。