主任介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉学(修士修了)
/地域包括支援センター管理者(杉並区) 本間清文
ようやく表面化した有料老人ホーム紹介ビジネスの問題
今年2月、「要介護度高い高齢者に『高額値付け』 老人ホーム紹介ビジネスが横行」(朝日新聞(https://www.asahi.com/articles/AST2J3C2ST2JUTIL00PM.html))という見出しが新聞をにぎわせました。
報道の概要は、一部の有料老人ホーム(以下「有料ホーム」といいます)において、入居する高齢者が難病等の場合に、「入居者紹介事業者」(以下「紹介事業者」といいます)に1人当たり最高150万円の高額な紹介手数料を払っているところがあるというものでした。
この報道の背景には、パーキンソン病専門の有料ホームに入居者を囲い込み、約28億円もの訪問看護サービスの不正や過剰な診療報酬の請求が行われていた報道がありました(厚生労働省 2025a)。
これに対して、厚生労働省は不正請求などについては、報酬返還や指定の取消しなどを行うでしょうが、これについては比較的、収束が早いと考えます。
理由は簡単で、訪問看護は法整備がきちんと整っているため、制度の修正や事業者の管理が行いやすいからです。
しかし、問題は、これに関与している有料ホームと紹介事業者です。特に紹介事業者については、法整備などは全くなされていないため、現状では規制や取締りなどができません。
そして、筆者はかねがね、この紹介事業者の存在に問題意識を持っていたため、今回、改めて考えてみたいと思います。
そもそも紹介事業者とは
ここで、紹介事業者について説明すると、それは、有料ホームなどに対して、無料で入居希望者を紹介し、入居が成立した場合に、施設から紹介料を受け取る業者のことです。「有料老人ホーム紹介センター」ともいわれたりします(図1)。
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出典:高齢者住まい事業者団体連合会(2025)
図1 高齢者向け住まいにおける入居紹介の事業モデル
紹介料は、1件当たり平均21.5万円(厚生労働省 2025b)。しかし、有料ホームの空き室が増えた場合などに、有料ホーム側が「キャンペーン」等と称して紹介料を1件50万円や100万円と釣り上げることもよくあります。
当然、紹介事業者にしてみれば、20万円の紹介料より100万円の紹介料を選びます。しかし、有料ホームを紹介される利用者や家族はそのことを知りません。結果的に、利用者にとって適している有料ホームが紹介されるというよりも、有料ホームや紹介事業者の都合を優先した紹介がなされる場合が少なくないということです。
また、こうした顧客(老人)を獲得するために、病院の退院支援などに当たる医療ソーシャルワーカーに接待までする紹介事業者も、少ないながらも存在することが認められています(日本医療ソーシャルワーカー協会 2025)。
冒頭の報道では、この紹介事業者への紹介料として150万円ほど払っていたといいます。では、どのような入居者に高値がついていたのかといえば、難病やガン末期などで訪問診療や訪問看護などのサービスを必要とする人たちでした。
その人たちに、自前の医療や訪問看護を集中的に提供すれば、十分利益は出ますし、入居者が支払うのは診療報酬や介護報酬の1~3割程度ですから、入居者が大きな被害を被るわけではありません。入居紹介料としての150万円を支払っても、十分採算がとれるのです。
しかし、忘れてならないのは、診療報酬や介護報酬の7~9割程度の内訳は税金や社会保険料からなる社会保障費から支出されますから、当然、その公正性や妥当性が問われます。
そうした疑義を投げかけたのが、冒頭の報道といえるでしょう。
それにしても、そもそも、なぜ紹介事業者なるものが存在し、必要とされているのでしょうか。それについて、次に考えてみたいと思います。